eスポーツ大会の法的問題点

私は,スポーツはやるのも見るのも得意ではないのですが,最近,新たにeスポーツというのがあるのですね。eスポーツ大会を開催するにあたってのお問い合わせが何度かありましたので,これを機に,少しまとめてみようと思います。


1 eスポーツ大会とは?

私の理解では,eスポーツというのは,いわゆるゲームで競う大会です。自宅で友達とゲーム対戦していたのが,規模が全国,全世界になったような感じです。


実際にダイジェストの映像を見せてもらったのですが,大きな会場で,大スクリーンに映し出して実況中継していて,すごい盛り上がりでした。人並な感想ですみません…。

他にも,会場を借りず,オンライン上のみで開催されることもあるようです。

なお,後日,こういう大会が開催されたよという報告のために,ダイジェスト映像をyoutube等に放送することについては,これはまた別に法的にクリアしなければならない点がいくつかありますが,それはまた今度。


通常のスポーツ大会開催と違うのは,既存のゲームを用いていることです。

ここには,著作権だとか商標権といった知的財産権の問題,また,大会には賞金がつきものですから,その賞金について景表法や風営法などの問題が絡んでくると考えられます。


この先のお話は,会場にはプレーヤーと観客がいて,プレーの様子をスクリーンに映し,それをニコニコ動画等を通じて生配信する形態を前提とします。


2 著作権の問題は?

プレーヤーがプレーするゲームそのものの著作権者がいます。

著作権には著作者人格権と著作財産権(こっちが一般的に言う著作権)とがあって,問題となるのは,著作財産権の方です。

著作財産権にもいろいろあるのですが,eスポーツで問題となりそうなのは,

・ゲームを直接またはスクリーン上でたくさんの人に見せること

・そのゲームのプレーの様子を録画しデータに残すこと

・そのデータを生配信すること

あたりかなと思います。

そのゲームの著作権者が開催する場合は問題にならないのですが,著作権者以外が開催するのであれば,著作権者に許可をもらう必要があります。

まだ,eスポーツ大会のガイドラインも策定されておらず,また,ジャスラックのような著作権許諾代行業者による管理もされていません。

どういう許可を取ればいいのかという決まりは特にありませんから,開催する大会で,どのゲームを使用する予定か,そのゲームのうちどの部分を使用するか,どのようなプレー形態か,どこで開催されるか,大会の規模,どこまで生配信するか,というように,具体的なところで一つずつ許可を取っていくしかありません。


3 賞金についての問題

賞金があるからこそ,大会に参加したいと思う人は多いはず。

しかし,日本においては,高額賞金がもらえる大会は開催されていないようです。

それは,賭博罪・賭博場開帳図利罪と,風営法の規制あたりが理由と考えられます。


①賭博罪(刑法185条)は,たまに賭けマージャンや野球賭博でニュースで出ているやつです。

プレーヤーから参加費を徴収し,その参加費を賞金に充てることで,プレーヤーとしては,参加費を払って,たまたまゲームに買ったら皆の参加費が賞金としてゲットできる,という点で,賭博罪に当たり得るのではないか,と懸念されます。

開催者側としては,そういう場を提供して中抜きしているので,賭博場開帳図利罪(鶏歩186条2項)が問題となるのです。

一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)は,この点について,一定条件を満たせばそういった罪には該当しないという見解を公表していますから,参考にしています。


私はゲームが苦手なので,「勝敗が偶然」といえるのか?私なら,偶然に勝つことはほぼあり得ませんので,その人の素質や訓練によるものでは?と思いますが,その勝敗が技術によるところが大きくても,賭博罪の成立にはあんまり関係ないというのが,現在の主流な考え方のようです。


②風営法は,ゲーム等で射幸心をそそるような遊びを客にさせる場合,遊戯の結果に応じて賞品を提供してはならない,としています。

eスポーツ大会の開催態様によっては,十分,当たり得るので注意です。

例えば,ゲームセンターがeスポーツ大会を開催して,賞金を用意するのは,かなり危ないというか,アウトよりのアウトだと思いますね。

一方で,会場を借りて一回こっきりのeスポーツ大会を開催するのは,微妙なところです。

青山REAX(旧今西総合)法律事務所

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