平成29年地方自治法改正の問題点

さて今回は,平成29年に改正された地方自治法に関し,当職が一番問題だと思う点を挙げます。


まず前提として,平成29年に,地方自治法の一部が改正,公布されました。

民間企業を倣って内部統制を制度化したり,監査制度をより実効性のあるものにしたり。

ここまでは良いんですが,長等の損害賠償責任の限度制度が設けられたことについては,余り良くない。


簡単に言うと,都道府県知事や市町村長,市職員等といった職員が都道府県や市町村に損害を与えた場合に,善意かつ重過失無しの場合,責任限度額以上は賠償しなくて良くなります。しかも,参酌基準が政令によって定められているとはいえ,賠償限度額を都道府県や市町村が条例で定めることができてしまう。

令和元年11月に公布された政令によれば,トップの長でも基準給与年額の6年分が限度となります。その他,副知事や副市長村長等は4年分,普通職員は1年分に過ぎません。


この基準通りに条例が制定されれば,例えば,都知事や府知事の給与及び期末手当の合計額が2000万(仮にですよ)としても,2000万×6年分=1億2000万が責任限度額となり,それ以上の責任は免除されてしまうことになります。

こうして数字にすると,上限を設けたところでやはり賠償範囲は大きいなと思えますが,職員による違法行為によって都道府県や市町村に生じた損害が1億を超えることは決して少なくありません。数10億という損害が発生したこともあります。


これにより,

・せっかく苦労して住民訴訟で勝訴しても,損害額が職員の責任限度額を超えている場合,損害全額を回復できない

・限度額が固定されるため,職員は賠償責任保険に入っていれば保険で全カバーされ,自分の財布は全く痛まない

・そうすると,住民訴訟が違法な財務会計行為を是正する効果が著しく殺がれる

・結果,職員の不正はやりたい放題に

という流れが予想されてしまいます。

税金で私物を購入し,税金で旅行に行き,…改正前ですらこの状況だったのに,なぜ今,更に不正を煽るような制度を設ける必要があったのか?


青山REAX(旧今西総合)法律事務所

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